偏食が許容されるたった一つの冴えたやり方

牛乳がけフルーツグラノーラは多面的に万能食であり、それだけを食べ続けていればよい。

以下に、その根拠を列挙する。

 

1. 栄養的万能性

穀物を植物油に浸してオーブンで焼くというグラノーラの基本的製法から、炭水化物と脂質は十分に含有されている。また各種ドライフルーツやナッツ、大手メーカー製品であれば添加物によって各種ビタミン・ミネラルも摂取できる。

さらに、後がけの牛乳により植物性原料だけでは不足してしまう動物性たんぱく質も補うことができる。そもそも牛乳はそれ単体で仔牛を一定程度生育させるためのものであり、各種の必須栄養素を大方含んでいる。

 

2. 身体体験の万能性

グラノーラはたった一口でも様々な体験を与えてくれる。

まずは味覚。甘さがベースではあるものの、甘さだけとっても様々だ。グラノーラにベースとしてつけられている砂糖やメープルシロップの甘さ、イチゴのバランスのとれた甘さと酸っぱさ、レーズンのねっとりした甘さ、焼いたグラノーラの香ばしさ、ナッツの濃厚さ…。多様な原材料を使用しているだけ多様な味覚を感じさせてくれる。

(注:とはいえ味としてはほとんど甘さだけじゃないかとお思いの方へ。甘さと対比される塩辛さは、サウナにでも入ってしたたる汗を舐めておけば感じられる。わざわざ別に食事をとる必要はない)

同様に嗅覚においても、焼いた穀物、各種ナッツ、フルーツが違った香りを鼻腔に届ける。

視覚、聴覚、触覚でも同様だ。色、舌触り、噛んだ時の音と感触、様々な原材料がそれぞれの異なった感覚をもたらす。

それに加え、牛乳が浸透していくことによる時間的な変化も楽しめる。初めはザクザク、だんだんサクサク、ふわふわと、刻一刻と異なる体験が提供される。

最後に、グラノーラという食べ物と牛乳という飲み物が一体となっていることで、普段は明確に区別される「食べる」と「飲む」という2つの行為も一体化されるということは付け加えなければならないだろう。スプーンですくった中にはグラノーラも牛乳もあり、それらが同時に口の中に入る。あるいは、ほとんどグラノーラばかりをすくいもっぱら「食べる」行為に偏ってもよいし、牛乳だけすくって「飲む」一口を楽しんでもよい。

こうした多様な原材料と時間変化がもたらす多様な身体体験が、フルーツグラノーラを食べることで提供される。

 

3. 文化的万能性

様々な原材料を使用しているということはすなわち、それぞれの原材料の文化的背景も含んでいるということであり、食べることは多様な文化的背景を体内に取り入れることである。

穀類でいえば、小麦は世界的に古くから利用され様々な食文化を生み出してきた一方で、オーツ麦はほとんど北欧でのみ利用されてきたというような具合だ。

ドライフルーツについても、イチゴやレーズン(ブドウ)のように幅広い地域で利用されている原材料がある一方でパパイヤ、マンゴーといった比較的狭い地域でのみ利用されているものも含まれている。上述の味の多様性という観点も、様々な文化的背景につながるものであるだろう。

こういった原材料の歴史を踏まえた文化的万能性に違和感をお持ちの方もいらっしゃるかもしれない。その場合は、グラノーラが様々な風味を許容するという点から万能性を感じていただきたい。砂糖やメープルシロップによるオーソドックスな味付けの他に、トロピカルなココナツ風味、抹茶や味噌(!)といった和風な味付けなど、専門店だけではなく大手メーカーからも様々な味付けで販売されている。フルーツグラノーラという概念は保ちながらも、まるで異なる印象を与えてくれるということから、より多くの方に万能性を感じていただけるだろう。

 

以上、大きく3つのカテゴリに分けてフルーツグラノーラを食べるという行為が備える万能性を述べた。食べるという行為から連想される体験はすべて、この中に含まれている。他の食事をとる必要はない。さあ、皆さんもフルーツグラノーラという万能性を暮らしに取り入れていこうではないか。