サラダボーイ

顔がかゆい、むしょうにかゆい

必死に掻いてもまだかゆい

ぽりぽり ぽりぽり

ひたすらひたすら掻き毟る

 

ザクッ

 

ボトッ

 

あっ、耳がとれた

不注意だ

顔中掻き毟っていたら、指が引っかかってしまった

 

耳が取れた部分からは体液がにじみ出て、むき出しの身をふさぎ、

あっという間に新しい耳が形作られた

 

地面に落ちた耳は、取れる前と同じような姿のままで、生気があふれている

よく見ると取れた耳からも体液がにじみ出ているようだ

にじみ出た体液は、赤い傷口をふさぎながら、肌色の面積を増やしていく

 

どんどん増えていく肌色

突然、赤いふくらみが現れた

 

口だ

口を作っているんだ

 

その口はかつて鏡で見た形そのままだった

残った自分が耳を再生したように、取れた耳も自分を再生しようとしている

 

やめろ、やめてくれ

自分の姿を見せないでくれ

 

顔がはっきり現れる前に、急いで耳と口を踏みつぶす

かかとをひねって、ぐちゃぐちゃに引き裂く

何度も何度も、形がわからなくなるまで潰した

 

それでも、引き裂かれた部分から、とめどなく体液があふれてくる

あふれた体液が、どんどん肌色を広げ、目や鼻を形作っていく

 

次々作られていく顔を、夢中になってつぶした

ただひたすら地面を見て、肌色と黒と白と赤と、

顔を思い出させるような色はことごとく踏みつぶしていった

 

 

だんだん体液が少なくなって、肌色は増えなくなった

しょせん一つの耳、これ以上体液は出ないようだ

 

それでも、潰した顔の色で地面は塗りつぶされていた

ひねりながらつぶしたからだろうか、目と口の色がちょうど弧を描いていて、

いびつな笑い顔を地面に映し出していた