ビジネス書の書き方

1 主張を考えよう

 

書店でビジネス書の棚を眺めながら、よく出てくる言葉(以下、A)をピックアップしよう。次にその言葉と逆のイメージを持つ言葉(以下、B)を思い浮かべる。そしてその言葉こそがビジネスにおいて重要なのだ、と自分に言い聞かせる(最重要ポイント)。思い込みが完了すれば、重要であると考えられる理由は何個も自然と思い浮かぶだろう。そうすればもう本文に手がつけられる。「Bと聞いて、ビジネスシーンと結び付けられる人はそう多くはないだろう」と書き出そう。あとは理由を簡潔に並べて本書の構成を述べたあと、最後に「これからその中身を見ていこう」とでもつけておけば『はじめに』の完成。

一方、Aがビジネス書で取り上げられている理由をサーチしておいて、それらの理由に反論しながら、Bの理由へと結びつけることも忘れてはならない。あまりぶっきらぼうに先人たちの主張を無視すれば、私のように友達がいなくなってしまう。そこまでできれば、「もちろん〜という主張もあるだろう。しかし〜」とか言いながらAの理由1、その反論、Bの理由1、という風に繰り返していけば第1章の完成。

 

2 主張の裏付けを取ろう

2ー1 すごい企業(多くはアメリカ)の事例を集めよう

例えばグーグルやアップル。ボストンとかマッキンゼーとかコンサルもいいし、ブランド力の高い企業の事例をかき集めてBの理由にマッチしそうなものをピックアップする。業種が多岐にわたっているからそれっぽい事例はいくらでもあるはずだし、ぴったりな事例が見つからなくても自分なりの解釈を付け加えて無理矢理繋げればいい。アクセントとしてたまに日本企業の事例を付け加えておくと吉。

2ー2 自分の経験と結びつけよう(あれば)

筆者の肩書きを気にするのがビジネス書の読者というものだ。「私は10年〜をやってきたが、そこで〜」なんて書いて、内容がまさにBの理由を体現したようなものだった暁には、読者の心は筆者に釘付けだ。

2ー3 科学的知見を活用しよう

論理的思考力が重視される時代において、やはり科学の権威というものを取り入れておきたい。脳科学や心理学、社会学とかを中心に、あるいは生物学なんかを齧って本能的な部分だと訴えてもいいのかもしれない。知見のアカデミックな世界での受け入れられ方なんてのは無視してよく、多少トンデモであっても自分の主張を裏付けるのであればじゃんじゃん取り入れていこう。なに、読者はジャーナルなんて購読していないし、していたとしても専門外の分野に口は出せない。

2ー4 失敗事例も取り入れよう

企業や自分の事例を集めようとすると、どうしても成功事例ばかり集めてしまいがちだ。Bがないばかりに失敗してしまったという事例も付け加えておくことで、さらに主張に説得力が増す。これもこじつけで良い。

 

本の序盤〜中盤にかけては、上記の内容を並べながら自分の主張を繰り返し述べていこう。

 

3 読者に歩み寄ろう

3ー1 身近な例を作り出そう

先ほど取り上げた事例はどれも有名な大企業だったり、本が書けるほどすごい著者のものだったりと、読者の立場からすると雲を掴むような話に思えてしまう。企業の1セクションの話なんかに置き換えたバージョンを作っておいて、適宜挿入しておこう。読者が身近に感じてくれれば、自分の主張もより受け入れてもらいやすくなる。先ほど述べた著者の失敗事例なんかも、親近感を感じてもらう有効な手段となりうる。

3ー2 今日からできる実践方法を考えよう

Bがどれだけ大層な言葉であっても、読者に何か変化を起こさせないようではビジネス書としてのヒットは見込めない。時にはエリートたちを、あるいはどこにでもいそうな平社員たちを事例に、実践方法とそれによってもたらされた変化を書き並べていこう。実践することはなんでもいいが実践してもらえなければ意味がない。通勤中の時間で済むことだったり、あるいは会社の休み時間に周りを巻き込んでゲーム感覚でできるものだったりするときっかけを掴んでもらいやすいだろう。

 

本の終盤では、こうした歩み寄りを見せながら自分の主張の普遍性を訴えていく。最終章はもちろん実践方法に充てる。最初に大きな主張を見せておいて、だんだんと一会社員であろう読者の立場に歩み寄っていく。最後に実践方法を書いて「あなたにもできる!」なんて言われた日には、読者はエクスタシィの境地に達してしまう。