mづあい

そうして彼は落ち込んで、その短い生涯を終えた。

楽しい出来事は一瞬で終わる。そう、あっという間に。それは塗り絵をしていて、弱い色、例えば黄色とか肌色(今は差別防止のためにうすだいだいと呼ぶらしいが)の色味の調整のために強い色を重ねる時のようだ。弱い色はすぐに強さに打ちのめされてしまう。あの色が出したくて、なんとか目の前の色を分解して編み出したというのに、少し力を入れればあっという間に強さに覆い隠されてしまう。強さ。それは自分の信念を信じられることだといってもいい。うすだいだいだって、そいつだけが塗られていればまぎれもないうすだいだいなのだ。だけど、そこに赤色とか、あまつさえ黒色なんて置かれてしまえば、何も彼の意思は反映されなくなってしまう。薄く薄く、とにかくそこは理性との戦いだ。色を塗りたい、その思いに毒されてしまうと見る間もなく黒一色に塗りつぶされてしまう。ああ、今日もまた心を込めて塗ったうすだいだいが一瞬の力によって黒く塗りつぶされてしまった。気づいてからいくらうすだいだいを力強く塗ったとしても、もう元には戻れない。漆黒。暗黒。それ以外何もない。黒くなった後に初めてきづく惨劇。

ああ、生まれてこなければよかった。